静岡県平和・国民運動センター
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 2012年12月16日に行われた総選挙は、改憲を掲げる安倍晋三元首相を総裁とする自民党が294議席、石原慎太郎前東京都知事を代表とする日本維新の会が54議席をとり、合計すると衆議院議席数の3分の2を大きく超えるという重大な結果をもたらしました。自民党は、当面は「アベノミクス」ばらまき政策などで本年7月の参議院議員選挙を乗り切ろうとしています。参院選で安倍自民党や石原維新の会などが勢力を増大させれば、衆議院任期の4年以内に「憲法改正」問題が政治日程に登場することは間違いありません。すでに、「維新」を含め、超党派にうごきのある統治機構の問題をめぐる動きや、総選挙前から発言や首相就任後の国会答弁などからも安倍首相が改憲発議を3分の2から過半数に引き下げようとする憲法96条改定の動きが急速に進められようとしています。

 このような事態にあたり、平和フォーラムは、自民党や維新の会などの改憲論や衆参憲法審査会の動向に対するとりくみを強め、その一環として、毎月1回ペースで著名人の方が憲法に対する思いと考えを語るとともに、憲法学者が改憲論の問題点を指摘する連続学習集会の第1回学習集会が4月3日、東京の連合会館2階大会議室において開催されました。「私と憲法」と題して作家の澤地久枝さん、「憲法をめぐる状況と課題」と題して一橋大学名誉教授の山内敏弘さん一橋大学名誉教授の山内敏弘さんから講演がありました。

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 澤地久枝さんは、1930年生まれで、今年83歳になられました。ご高齢を押して約1時間立ち詰めでお話をされましたが、戦後、学校の先生が映画『カサブランカ』を見せてくれて、皆さんわかりましたか、と質問され、わかりましたと答えましたが、つい最近、改めてこの映画を見て難しい映画だったと思ったことを話されました。1946年11月憲法が発布され先生が盛んに「天皇は象徴である」とこだわるのが印象に残っている、と話し、戦争の放棄はこだわることなくすんなり理解した、と言います。1972年5月15日復帰にあたって沖縄版の憲法読本が作られ屋良朝描氏が制定のあらましを述べているが、ここにはポツダム宣言と国際連合憲章を引き合いに出し、その精神が引継がれている、と紹介されました。無条件降伏を実際の目で見た立場からすれば、自民党の改憲案など見たくもないが改憲というなら憲法の原点に戻れ、と言いたい、と話されました。

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 続いて話をされた山内敏弘さんは、ウキぺディアで「日本における平和主義研究の第1人者」と書かれていることを謙遜されて話を始められました。9条について世論調査をやるとまだ反対が多いので96条改憲から手を付けようとしており、これは民主党の分断の為ではないか、とし、96条改憲の問題点について初めに話されました。まず、自民党がどのような意図で96条改憲を提起しているかQ&Aを見て見ると、ドイツでは戦後何回となく改正しているのに、日本はずっと変えていない、憲法を変えられないということは主権者の意思表示ができないことを意味している、と批判しています。しかし、総司令部内での憲法制定過程を見ると総議員の4分の3の賛成を要件とし、基本的人権にかかわる条文については選挙民の3分の2を要件としており、人権状況については改正に手が付けられないほどになっている、と紹介されました。

 また、衆議院と参議院では衆議院優先の考えがあるが、こと憲法については容易に改定できないようにするために、さらには保守性も尊重して憲法制定議会で熟慮を重ねた結果、衆院の優越を外している、と述べられました。米国の例や、韓国の例、スペインの例などを紹介し日本より余程厳しい改定要件を付していることが紹介されました。しかも、自民党のQ&Aを見ると主権者の意思を反映できないとして96条改正を主張するが、前文に「天皇を戴く国家」と述べているところからすれば、なにが主権者の意思を尊重するなどと言えるのか、と強く批判されました。自民党改憲案102条では現行憲法の99条にあたる憲法尊重擁護義務を規定しているが、ここには天皇がなく、国民が入っていることを指摘し、天皇は国家の上に立つ存在として自民党改憲案前文と102条が国民主権否定で一致している、と提起されました。またぞろこんな時代遅れの憲法を持とうというのか、主権者が自民党に投票するようなことは自分で自分の首を絞めるようなもの、と警鐘を鳴らしました。

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 会場から、自民党改憲案は国民の義務を書き込んでいて問題だが、現行憲法にも第3章で国民の権利と義務としているのは何故か、と質問が出されました。山内教授は、明治憲法にも「権利と義務」と書かれ、明治憲法の良くない所が継承されてしまった、と見ていることが明らかにされました。その意味からすれば正に「国民の権利」だけで良く、義務規定を書くべきではなかった、と明快に回答されました。

 この度の憲法問題連続学習集会は非常に価値あるものであり、今後の運動発展に欠かせない提起を含むものとなりました。次回は、5月22日(水)同会場、同時刻から鎌田慧さん、飯島慈明さんをお呼びしての学習集会となります。