静岡県平和・国民運動センター
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 平和フォーラムは、11月21日午後、東京千代田区の衆議院第一議員会館で、「特定秘密保護法」及び今後予想される「国家安全保障基本法」に関する国会情勢および取り組み方針に関して、平和フォーラムの組織内における意志統一を図るため『秘密保護法』を考える院内集会を開催し約300人が参加した。集会ではジャーナリストの江川紹子さんを招き、同法案の問題点について講演、「立憲フォーラム」議員からの国会情勢の報告が行われた。

秘密保護法反対

立憲フォーラム代表あいさつ 近藤昭一衆議院議員

 根本的な問題を解決しなければ、国民のためではない、大きな問題で禍根を残す法案である立憲フォーラムとして、これまで多くの集会を開いてきた。今、特定秘密保護法案が衆議院で審議中である。残念ながら、全く不十分な修正にみんなの党や日本維新の会が応じてしまっている。しかし、本当に問題のあるこの法案を何とか廃案にしていかなければならない。
 特定秘密とは何が秘密かわからない、これが特定秘密である。そして勝手に秘密が指定されて、ずっとわからない。この秘密が国民のためではないものであっても、チェックする機関も、それを処罰する仕組みさえもない。これは、いくら議論をしても根本的な問題を解決しなければ、国民のためではない、大きな問題で禍根を残す法案である。何とかこの法案を廃案にするために、皆さんとともにがんばっていく 。

国会での審議状況報告 辻元清美衆議院議員・立憲フォーラム幹事長

 担当大臣である官房長官は審議に出席せず国会の中では、非常にふまじめな審議が続いている。議員席はがらがら、そして水面下での維新の会やみんなの党との修正協議。あたかも維新の会の元自民党の一部の議員は、この修正案を手土産にして、自民党に戻りたいというような、国会での出来レースのような質疑をしている。
 答弁する森大臣は、消費者庁の担当大臣であり、今、食品偽装の問題が出ていのるに、一切そちらの委員会を開かず、答弁担当大臣として派遣されてきている。この特定秘密保護法案の担当大臣は、官房長官である。しかし、官房長官は審議にも出席せずに国会運営がされている。

秘密保護法反対

「秘密保護法に反対する」 江川紹子さん(ジャーナリスト)

 これは、現代版の治安維持法になりかねない。私は、防衛や外交という分野に係わることはあまりなく、主として刑事事件や地方のあり方に係わることが多い。そういう観点からみても、この法案には、不安なところや危ないところがある。
 故伊藤栄樹元検事総長の回想録の中で、1986年に起きた共産党幹部宅盗聴事件について「おとぎ話」という形で語られていた。それは、『ここで、この国の検察トップは考えた。末端部隊による実行の裏には、警察のトップ以下の指示ないし許可があるものと思われる。末端の者だけを処罰したのでは、正義に反する。さりとて、これから指揮系統を次第に遡って、次々と検挙してトップにまで至ろうとすれば、問題の部門だけでなく、警察全体が抵抗するだろう。その場合、検察は、警察に勝てるか。どうも必ず勝てるとはいえなさそうだ。勝てたとしても、双方に大きなしこりが残り、治安維持上困った事態になるおそれがある。それでは、警察のトップに説いてみよう。目的のいかんを問わず、警察活動に違法な手段をとることは、すべきではないと思わないか。どうしてもそういう手段をとる必要があるのなら、それを可能にする法律をつくったらよかろう(一部抜粋)』と。
 この『目的のいかんを問わず、警察活動に違法な手段をとることは、すべきではないと思わないか。どうしてもそういう手段をとる必要があるのなら、それを可能にする法律をつくったらよかろう』という言葉が今よみがえってくる。それこそが、特定秘密保護法案ではないか。この法案は、「外交」「 防衛」「テロ防止」「スパイなど特定有害活動の防止」をカバーし、後の2分野は、主に公安警察、公安調査庁が担当することになる。この分野の秘密の指定は、行政機関の長、つまり、警察官僚と検察官僚となる。そうなると、違法な秘密も保護される。例えば、テロ防止と言って違法な捜査をしても隠せることになる。
 個人情報保護についてもしっかり議論しないままに、こういった法律がどんどん進められるというのは非常に問題である。この法律では「知る権利」が問題になっているが、それだけではなく、一般の人たちの「知られない権利」も脅かされているのではないか。
「知る権利」というのは、メディアの問題ではなく、一般の人たちの問題である。それに加えて、一般の人たちが、監視の対象となることを容易にさせる。そして、それがわかりにくくなるというのが問題である。この特定秘密保護法を許してしまえば、一般の人たちの思想や行動のチェックをされてしまう。これは、現代版の治安維持法になりかねない。警察庁や検察庁は、組織の中で官僚がトップになっていく組織であるから、そこにすべての権限を与えてしまっては、とんでもないことになるのではないか。
 このような法案は廃案にして出直すべきである。国の官僚支配を許すのかどうか、広く国民のプライバシーやさまざまな人権に係わる問題だということを、もっと強調していくべきである。

各界からの発言

日弁連秘密保全法制対策本部・本部長代行 江藤洋一(弁護士)

 私たちは、この法案の元となる有識者会議の報告書ができた時から、反対運動を起こした。法案の中身を伏したまま、水面下で法案の作成がされてきた。ようやく、今年8月になって、法案の概要が示されたが、案の定、内容はひどいものであった。この大事な法案の意見募集が、わずか2週間であったが、10万通近い意見が寄せられた。これは大変異例のことである。しかもその8割が反対意見であった。
 その反対意見を封印し、国民に提示することもなければ、その反対意見を入れて、法案を作成し直すことも全く行われていない。なぜ概要を伏したまま法案の成立させなければならないのか、大きな疑問を感じる。今、国民と国会と間にねじれが生じている。
国の利益を守るために、何らかの秘密が必要かもしれないが、しかし、それは、国の利益、政府の利、及び政府の役人の利益は全く違う。そこが、国会での議論から抜け落ちている。仮に、特定秘密を保護する必要があるとしても、そのために、この法案が適正かどうかの議論が全くされていない。「特定秘密の保護が必要だ」という議論が「この法案が必要だ」という議論にすり替わっている。非常におかしいことである。

自由人権協会理事(前事務局長) 藤原家康(弁護士)

 憲法的に見た時、なぜ、このような法律を作る必要があるのか。市民にとっては規制となるのであるから、憲法上許されるのか。それは、公共の福祉という概念で通常語られることになる。公共の福祉という観点からの制約だけが、基本的人権の制約として許されることになる。この法律について、それが言えるのか。それに対する「対立利益」がこのようにあると言えない限り、合憲にはならない。現在も、国家公務員法などの法律により規制されているわけであるから、それ以上の法律を以って正当化する理由は見当たらない。この法律の制定は単なる制定ではなく、憲法改正のための制定である。つまり実質的な憲法改正である。安倍一門の国会議員たちが暴走し始めている。憲法は、国民一人ひとりが立ち上がらなければ守れなくなる。

日本ペンクラブ 篠田博之 言論表現委員会副委員長

 国際ペンクラブが、この特定秘密保護法案についての声明を出した。これは極めて異例のことである。このことは、国際的な言論関係者が憂慮している表れである。市民の言論の自由だけでなく、メディアにとっても大きな問題になる法律である。

宗教者九条の和 武田隆雄 日本山妙法寺僧侶

 とにかく、戦争準備法である特定秘密保護法案を廃案にしていかなければならない。宗教者は「いのちを守っていく」「いのちを殺してはならない」、その立場で、この法案を廃案にするために皆さんと一緒にがんばっていきたい。

研究者の立場から 田島泰彦 上智大学教授

 この法案の中に「知る権利」、「取材報道の自由」が明記されている。したがって、「知る権利」は大丈夫だし、「取材報道の自由」は安心していい、と与党の議員は言っているが、誰も信じていない。法案そのものが「知る権利」、「取材報道の自由」、「表現の自由」を保護するものになっているのか問題である。出版や報道の業務に携わる人たちは保護の対象になるが、私たち研究者や一般の市民は保護の対象から外される。
 さらに大事なことは、取材源を厳罰で絞るということである。一番情報を持っている自衛官、警察官、国家公務員は厳罰に課されるわけであるから、情報を出すはずがない。だから、メディアやジャーナリストがいくら取材しても情報を出すはずがない。取材の自由はあると言っても、実際は空洞化せざるを得ない。取材の意味がなければ、報道も意味がなくなり、空洞化する。報道が空洞化されたら、お金を出して新聞を読むだろうか。いずれにしても、大事な情報は市民のもとに届かなくなる。したがって、この法案の「配慮規定」は意味がない規定である。
 法案の本質的な部分を根本的に変えない限り、本来の意味での「知る権利」、「取材報道の自由」や「表現の自由」は満たされないと言わざるを得ない。この法案は国際的な基準を全く満たしていない。国際社会の考え方というのは、まず秘密があって、その残りカスを知る、取材報道するという考え方ではない。国の秘密、情報といえども、基本的には、国民の共有財産であって、国民は「知る権利」を充足させてしかるべきだし、情報公開を請求して当たり前である。それを前提にして、必要最小限度で国の秘密というものを限定的に考える。これが今の民主主義の基本的な方向である。世界の流れは「知る権利」や「情報公開」を広げている。国の秘密を少なくしていく、限定するというのが、世界の大きな流れである。国際的なヨハネスブルク原則やツワネ原則に真っ向から背をむけるものである。

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