食の安全・安心や農林業の再生、森林や水などの環境保全などの政策と運動について討議する「第45回食とみどり、水を守る全国集会」(主催・同実行委員会主催)が、11月29日、仙台市の仙台国際センターで「杜の都仙台から発信! 取り戻そう人々の暮らしと豊かな自然 ─震災復興をめざして─」をテーマに開幕した。全国の市民団体や労働団体、農業経営者ら約850人が参加した。静岡県からは9人が参加した。
全体集会
全体集会は、三戸一宏全国集会副実行委員長の開会のあいさつで始まった。司会は宮城県実行委員会の樋川つやこさんと石森和彦さんの2人が務めた。最初に、棚村博美・全国集会実行委員長の主催者あいさつ、続いて、佐藤修・宮城県実行委員会副実行委員長の地元あいさつ、そして、奥山恵美子仙台市長、山崎透連合宮城会長の2人の来賓あいさつ、その後、道田哲朗全国集会事務局長から情勢と運動の提起がされた。また、特別アピールとして、山浦康明・集会副実行委員長(日本消費者連盟代表)からTPP交渉をめぐる動きと問題点が説明された。この提起を受け、全体集会の最後に「TPPの妥結・参加に強く反対する決議」が提案され、採択された。
主催あいさつ(棚村博美 全国集会実行委員長)
急進的な構造政策は決して地域農業の強化には結びつかない
多様な担い手を退場させ、地域の人的資源、生産資源を縮小させる
2011年3月11日の東日本大震災が発生してから、2年8か月が経過した。その被害はあまりにも甚大で、被災者と被災地の皆さんに癒しきれない悲劇をもたらした。この地で全国集会を開催するにあたり、被災地の復興、再生に向けた気持ちを固めあうことが極めて大切だと思う。私たちは、近年でも、阪神淡路大震災をはじめ、幾多の大災害を経験してきた。しかし、その経験をしても、近代文明の発展によって、大きな自然変動に対処できる感覚をずっと持ち続けてきたのかもしれない。東日本大震災は、こうした私たちの考えを根底から問い直す衝撃を与えている。高度な技術で造られた防災施設は、簡単に津波に洗われ、近代技術の象徴でもあった原子力プラントは、炉心溶融という事態に陥り、私たちの命や生活を圧迫している。この経験から私たちの世代は何を学ぶのか、また何を教訓として、後の世代に引き継いでいくのか、このことを2日間の仙台集会で自らが問うていただく、そして、語り合っていただきたい。
さて、被災地は再生に向けて、歩みを続けています。しかし、全面的に破壊された生活と生産基盤の再建は容易ではない事態が続いている。特に、私たちが共通して係わりを持つ農林漁業と地域の再生は難しい状況の中にあり、再生には長い時間を必要としている。一方、多くの人たちが知恵と経験を持ち寄って、再生に向けて奮闘を続けている。この集会に結集をしている多くの人たち、多くの組織が、それぞれの持ち場から支援と声援を送っている。「がんばれ、被災地。がんばれ、東北。」私たちは、この声をこれからも送り続けたいと思う。
私たちは、職業と生活基盤を支える、食とみどり、そして水こそが大きな価値を持つという信念で運動を進めてきた。そして、この運動は崇高な理念を持つゆえに、極めて現実的な課題に直面するのである。自分の身の回りにある食とみどりと水は、世界の、国内経済の動きに連動し、農林水産行政や水環境行政などを通じて、政治の動きとも密接に関係している。TPP交渉に関する動きやその最たる動きとして、私たちに大きな問題を突き付けている。昨年の大阪集会でも、TPP交渉参加に反対していくことを意思統一してきた。しかし、民主党政権によって検討が開始された交渉への参加問題は、安倍政権によって交渉参加が決定され、年内妥結が懸念されている。しかし、秘密協定を盾に日本政府が交渉でいったい何を提案し、何をめぐって交渉しているのかさえ、明確になっていない。断片的な情報によって、交渉の動きを推測するばかりであり、国会でさえも事実確認ができない。こんな経済交渉とその結果を受け入れるわけにはいかない。各国にはそれぞれ固有の歴史と経済の仕組みが 存在している。それを根本的に解消して、経済ブロックを形成する動きには、多国籍資本と金融資本とを別にして、誰の利益にもならない。引き続き、あらゆる運動を通じてTPPの問題を訴え続けていかなければならない。
また、TPPと軌を一にするように、農林水産行政の改革論議が急ピッチで進んでいる。私たちの問題意識も当然にして改革を否定し、現状維持を求めるなどという単純なものではない。これは改革の軸足をどこに置くのか、なのであります。民主党政権は、構造政策一本やりの農政転換を目指し、農、林、水を網羅する直接支払いを強化し、しかし、政権交代によって農政の軸足は従来以上に構造政策に重点が置かれようとしている。急進的な構造政策は決して地域農業の強化には結びつかない。むしろ、多様な担い手を退場させ、地域の人的資源、生産資源を縮小させる危険性を排除できない。
食とみどり、そして水をめぐり、あらゆる分野で大きな課題に直面している。しかし、こうした状況にあるからこそ、2日間の論議に認識と課題の共有化を図り、進むべき道を確認していただきたい。
宮城県副実行委員長あいさつ(佐藤修 宮城県実行委員会副実行委員長)
復興の現実を自分の目で確かめて、全国に発信していただきたい
2011年3月11日の東日本大震災が発生してから、2年8か月が経過した。外見上は非常に穏やかに見えるが、内面的には住宅再建などの問題はほとんど進んでなく、加えて津波による農地や海岸林の被害は甚大ある。また、福島第一原発事故によるイナワラや野菜などの放射能汚染が、畜産農家や野菜農家にも大きな影響を与えている。本集会は、人間の命の根源に係わる課題をシンポジウムや分科会で深く議論がされると思う。食とみどり、水の大切さをそれぞれの地域で実践されている皆さんが、活動の交流やフィールドワークを通じて、復興の現実を自分の目で確かめて、全国に発信していただきたい。
来賓あいさつ
奥山恵美子 仙台市長
まだまだ、多くの農業者が仮設住宅にお住すまいになっている。仮設住宅に住んでいる生産者の「本当に農産物を収穫できたことが、こんなにうれしいとは、今まで農業を長年やってきたが思わなかったくらいの喜びだ」という声を聞いて、私もさらに、生活再建、そして農業の再生に向けて一緒に歩んでいかなくてはならないと気持ちを新たにした。仙台に限らず東北は、担い手の問題や耕作放棄地の問題など、日本の農業の抱える様々な問題の集積地といっていいくらいではあるが、一方で、それらを乗り越えようという動きも起きている。どうぞ、こうした新しい可能性にも光をあてていただきながら、全国の皆さんにとって、今年、来年に向けての有意義な議論になりますよう期待している。
山崎 透 連合宮城会長
被災してから3年目の冬を迎えたわけであるが、仙台市の沿岸部の1,800ヘクタール、やっと8割の農地が復活したが、全国の連合の仲間が、災害ボランティアとして、がれき処理、泥かき、そして側溝の泥上げした土地が、まさにその土地である。皆さんが復興復旧に努めていただいたことが、この秋、その土地で無事収穫ができたと思う。まさに食とみどり、水という命の源を守っている皆さんに、被災して以降の宮城がどう立ち上がっていくのか、最後まで見届けていただきたい。皆さんの、食、みどり、水の観点からの様々な意見を、今後の復興再生のつなげていけたらと思っている。
情勢と運動の提起(道田哲朗 全国集会事務局長)
地域が未来に向かって、元気に立ち上がっていこうとするその姿を
この宮城県で学びながら、また発信していこう
今年の「第45回食とみどり、水を守る全国集会」は、、大震災、原発事故に直面した東北の地、仙台で開催することとなった。大震災は、食とみどり、水を守る基盤である農林漁業に、壊滅的な被害を与えた。そこからの復旧・復興は、危機に瀕する各地の農林漁業・農山村のこれからのあり方にも通じるものであり、住民と関係者が一体となった取り組みが求められている。
一方、原発事故はあらためて、私たちの課題である「食・みどり・水」を守ることと、原子力政策が対極のものであることを思い知らされた。私たちはあらためて「人類と核は共存できない」ことを確認し、できるだけ早期の「原発ゼロ社会」の実現をめざして、エネルギー政策の転換を求めていかなければならない。
さて、もうひとつ、重大な問題が私たちの前に立ちはだかっている。TPPの問題である。安倍首相は、本年3月に交渉参加を表明、7月から正式に交渉に参加した。TPPは究極の自由化である。この自由化は、人間の基本的な営みの姿を変えるものである。戦後の経済成長重視の自民党政権の政策によって、環境、農林漁業、地域社会は大きな打撃を受けてきた。新自由主義政策のもと、生活基盤や社会保障制度が壊され、格差の拡大、公共サービスの後退が顕著となった。
私たちはこれまで、食、みどり、水をテーマとして、環境と人間のかかわり、生産と消費に関する課題について議論を深め、情報を共有し、運動に結びつけてきた。その取り組みをさらに発展させ、地域が未来に向かって、元気に立ち上がっていこうとするその姿を、この宮城県で学びながら、また発信していきたいと思う。
この後、「大震災・原発事故問題」「tppなど貿易自由化」「食の安全・安心と食料・農業・農村政策」「森林・水を中心とする環境問題」等、個々に関する動きと課題について提起した。
TPP問題の特別アピール(山浦康明 全国集会副実行委員長)
自民党の公約である聖域の保護や議会決議も守られない
TPPの問題点として、1点目は、オバマ大統領には交渉権限が与えられていないことである。そのため、関税問題では、日本の自由化率を100%近づけるよう圧力がかかっている。また、自民党の公約(聖域の保護)や議会決議も守られない。
2点目は、非関税障壁である食の安全について、ハーモナイゼーションを強要してくる確率が高い。遺伝子組み換え食品の表示義務緩和、食品添加物の拡大などの恐れがある。
3点目は、生命保険分野や自動車分野での米国に対する大幅な譲歩である。かんぽ生命のがん保険の発売を禁止させ、アフラックのがん保険を全国の郵便局で販売をさせたり、軽自動車税の見直しの恐れがある。交渉の進展について、「原産地規則」「政府調達」については交渉が進展している。「貿易円滑化(通関手続き等)」、「SPS(衛生植物検疫)」、「TBT(貿易の技術的障害)」については、年内合意のめどがついた。しかし、「知的財産権」の問題については、年内合意の見通しはついていない。
※【食の安全についてのハーモナイゼーション】 遺伝子組み換え食品(GMO)の流入、農薬・添加物使用基準の緩和、米国産牛肉の輸入制限緩和など。各食品への表示義務、表示基準も低下。ハーモナイゼーションまたは調和というと聞こえはいいが、実際は、国によってことなる様々な基準のうち、もっとも低い基準にハーモナイズする、調和する、ということ。食の安全が脅かされる。
全体シンポジウム 復興ビジョンの理念と現実的な課題
―復興から復幸に向って今なすべきこと―
全体集会に引き続いて開かれた「復興ビジョンの理念と現実的な課題-復興から復幸に向って今なすべきこと-」と題したシンポジウムは、工藤明彦食・緑・水を創る県民会議会長で東北大学総長特命教授をコーディネーターに、(有)耕谷アグリサービス代表の佐藤富登志雄さん、JA仙台震災復興推進課長の渋谷奉弘さん、河北新報社論説委員会副委員長の佐々木恵寿さんの3人をパネラーに、大郷みどり会の西塚敦子さん、仙台市議会議員の相沢和紀さんの2人を助言者として討論した。
震災前よりもより良くすることを目標に
【パネリスト】 (有)耕谷アグリサービス代表 佐藤富登志雄さん
震災当時、76ヘクタールの農地を集積し、農業経営をしていたが、震災により、9割の農地が塩をかぶってしまった。会社を潰すわけにはいかないと、震災1週間後には、メインバンクと資金調達について相談をした。次にJAに行き、被災した農業機械を全部発注をし、1か月後に納品された。残った1割の土地は水田であったが、米作りを自粛し、減反政策を利用して大豆栽培を始めた。周りの農家からも、大豆栽培の依頼が来て、結果的には、60ヘクタールの土地に大豆栽培をすることになった。これ成功したきっかけは、農業機械を早めに発注したことであった。ピンチをチャンスに変える。震災前よりもより良くすることを目標に据えた。
日本に誇れる集落をつくっていきたい
【パネリスト】 JA仙台震災復興推進課長の渋谷奉弘さん
今後の農業の方向性としては、これからは農地を集約していかなければならない。震災で農器具を失って農業ができない方も多いので、農地を集約することがある程度可能になってきた。テナントビルのようにゾーニングをして、新たな農業展開をしていきたい。今、農業制度が大きく変わろうとしている。震災直後は、このような集約型農業に向って進もうと取り組んでいこうとしていたが、さまざまな農業政策の変更で、復興に向って進んでいきたいが農家の方の戸惑いがある。そうも言っていられないので、われわれ関係機関が協力して日本に誇れる集落をつくっていきたいと思う。
今、農業をめぐる情勢というのは、風運急を告げている
【パネリスト】 河北新報社論説委員会副委員長 佐々木恵寿さん
わが社も去年の元日の朝刊に、東北再生への提言を発表した。わが社が委嘱した有識者の方々の議論を踏まえ、14項目にまとめた。その中の一つが、仙台の東部、仙台平野での農業復興の提言である。 「テナントビル型の農業を展開し、その担い手は組織化された法人が望ましい。100万都市・仙台の隣に位置している好条件を活かし、農と食を基軸にした交流・連携ができる消費者がいることを意識しながら、今農業が抱えている課題を克服しながら、新しいモデルとなるような地域農業を創っていこう」という提言をさせてもらっている。これも一つの復興の方向性ということになる。
今、農業をめぐる情勢というのは、風運急を告げている。TPPはどうなるのかわからない。5年後には米の生産調整が廃止される。被災地では、これから、農業復興の道を切り拓いていこうという人たちにとっては、逆風になるのか、追い風になるのか、見通せないが、いずれ大変な試練が待っているとうことは確かだと思う。それから、沿岸部の農業の復興ということを考えた場合に、沿岸部の人たちは、沿岸部に住めないので、より内陸に住むことになる。そうなると、通勤するということになり、不安を抱えることになる。これからの道のりというのは大変であるが、私たち、河北新報社も被災地の新聞社として、後押ししていきたい。
信念や目標を持っていないと法人として事業継続は難しい
【助言者】 大郷みどり会 西塚敦子さん
私の夫は、「大郷グリーンファーマーズ」という法人を立ち上げ、お米と大豆を生産している。私は、その留守を預かり、養鶏と野菜の生産をしている。法人化した夫の仕事を見ていると、法人化するのは簡単であるが、それを継続していくのは大変なようである。しっかりとした信念や目標を持っていないと法人として事業継続していくのは難しいと思う。また、しっかりしたリーダーの存在も必要である。
減反政策で、飼料米を作って、鶏に与えて、「玄米卵」として出荷している。震災当時は、餌はほとんど手に入らなかったので、この飼料米のおかげで会社は生きのびた。今も飼料米は作っているが、ニワトリの餌としてだけでは、どうしても余ってしまう。飼料米だけでトウモロコシが入っていないと黄色い卵にならない。そこで、少し色を出すようにした。また、野菜も減農薬、農薬をほとんど使用しないようなかたちで作っている。BM活性水を作物にかけ、元気がいい状態で育つように、また、ニワトリに与えて、できるだけ丈夫なカラダを作ってもらい、虫や病気にかからないようにしている。また、ニワトリから出た鶏糞を利用した「資源循環型農業」を行っている。
私は、信念をもって、組合員の方々に、安全・安心な作物や卵を食べてもらうため、減農薬での栽培や土壌分析検査の実施、出荷時には放射能検査も行っている。今、一番不安に感じていることは、沿岸部に工場のようなところで、野菜をつくっていることである。土で野菜を作って、それを人間が食べることがいいと思っている。それが、工場の中で作った野菜を食べ続けて、今後どうなっていくのか、不安な部分はある。工場で野菜を生産する企業に、私たちのような農家が太刀打ちできない状況になるのではないかと心配である。長男が会社に入って事業を継いでくれているので、長男の世代もこのまま農業がやっていけるのか一番の不安である。
また、不満な点は、被災し被害がでても、国・県からの補助金は出ず、自力で再建してきた。その分、被害が甚大であった宮城県沿岸部の人たちに一円でも多く補助が出ればと、それが支援になるのではないかと思いながら日々やってきている。
【BMW技術】
BMWとは、B=バクテリア・M=ミネラル・W=ウォーターの略。自然界は、動物の死骸や枯れ葉をバクテリア(微生物)が餌として分解し、水と土をつくる。この自然浄化作用により「生態系の循環」が保たれているが、中心にいるのが、微生物(バクテリア)である。BMW技術は自然の自浄作用をモデルにバランスよく微生物を活性化し、生き物にとって「よい水」「よい土」をつくりだす技術である。
国には、「災害は会議室ではなく、現場で起きている」ことを強く言いたい。
【助言者】 仙台市議会議員 相沢和紀さん
仙台市東部の農地では、やっと作付けができるようになったが、住宅再建はまだまだである。そういう中で行政は何をしてきたのか。私がこれまで感じたのは、国が決めた復興事業、その事業が田畑とマッチしていないことである。その中でも一番感じたのは、「省庁による力の違い」である。国には、「災害は会議室ではなく、現場で起きている」ことを強く言いたい。想定外というのではなく、想定できるものはすべて準備しておくことが大切ではないか。各自治体関係者の方には、対岸の火事ではなく、自分の自治体のところに来た場合はどうするのかをもう一度考えてもらいたい。
もう一つは、コミュニティの問題である。地域コミュニティを形成する一人ひとりの生活が違う。専業農家、兼業農家、サラリーマンといろいろな世帯がある。だから、農地があってもそこに住まなくていい。また、一人ひとりの経済状況が違う。仮設住宅に最終的に残るのは、将来が見えない、低所得者などの生活弱者の方たちである。そうなると、仮設住宅の中で、いがみ合いが起こる。そういうことも含めて地域コミュニティを考えると、行政としてどうするのか、解決策は難しい。最後に、自助、共助、公助の自覚・認識をお互いに持つことが大切である。これからの暮らしの再構築は何から始めればいいのか、希望はどう見出していけばいいのかが問われる時代となった
【コーディネーター】
食・緑・水を創る県民会議会長で東北大学総長特命教授 工藤明彦さん
皆さんのお話の共通していることは、自前で頑張る、そして自ら状況を切り拓く。自助、共助、公助があるけれども、まず自助から始まる。そういうところでは、一緒であったと思う。それがあって、支援を活用できる。大変な状況ではあるが、それは、農協の力を借りたり、行政の力を借りたりしながらも、地域の人々の「自分たちで復帰するんだ」という最初の推進力であるという、話ではなかったのではないか。
それでは、復興の担い手は誰か。それは一人ではできない。担い手というのは、復旧、復興の思いを共有する多様な担い手だと思う。復旧、復興の思いを地元の人々と共有できる企業系であれば、歓迎されるのではないか。逆であれば、地元に入ろうと思っても入れないかもしれない。支援については、縦割り行政という硬直的な、上意下達のような支援というのは、なかなか現場との間でミスマッチが大きい。やはり、そういうところを克服していかなければならない。
震災後、3年間は、まず「命をつなぐ」支援、次に再生に向かって「もう一度立ち上がるため」の支援、最後に「希望を後押しする」支援である。こういう支援が適切に行われる必要があったし、これからもあるべきである。ただし、それは上(国など)にお任せするのではなく、地域の中で、そういう選択ができる力をつけていく。いろいろな支援の中から選択をして、ふさわしいもの取り入れていく。そういう地域の人々の力が、問われていると思う。これは何も、被災地域に限られた話ではなく、日本社会全体が、これから暮らしをどう継続していったらいいか、不安になりつつある。これから暮らしを再構築するというのは、何から始めればいいのか、暮らしの希望は、どういうかたちで見出していけばいいのか、そういうことが問われる時代となった。
農業は「土地」が一つの絆になるのではないか。農地という歴史、伝統、文化がつまった社会的共通資本をどうするのか。これはみんなでコミュニティを再生しながら、震災からの復旧、復興を考えていく場合のヒントになるかもしれない。では、被災地以外の普通の人々の暮らしの再建というのは何か。それは話がでなかったが、明日の分科会で、少し幅を広げて議論をしていただきたい
TPPの妥結・参加に強く反対する決議環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉はいま大きな山場を迎えています。 安倍晋三首相は今年3月に、「農産物5品目など「『国益』は強い交渉力で守る」として、多くの生産者・消費者・市民の反対や懸念を無視して交渉参加を表明し、7月から交渉会合の席に着きました。しかしその後、交渉内容はほとんど明らかにされないまま、10月8日の首脳会合で「年内妥結をめざす」ことが確認されています。 これに対し、4月の衆議院・参議院両院の農林水産委員会で、(1)農林水産物の重要品目は関税削減・撤廃対象から除外、(2)重要5品目の聖域が確保できない場合は交渉からの脱退も辞さない、(3)食の安全・安心、食料の安定生産を損なわない、(4)投資家・国家訴訟(ISD)条項に合意しない、(5)国会・国民に十分な情報を提供し、幅広い国民的議論を行う、などと決議をしています。
しかし、これらの決議が遵守されるとは、到底考えられません。TPP交渉は、国会決議を無視し、国民的な議論もないまま、秘密裡に一部の政府・官僚、経済界だけで進められています。 TPPは農産物などの「関税」をはじめ、21分野という多方面にわたって交渉が行われています。そこでは、関税撤廃はもとより、各国の独自の規制や基準の撤廃や均一化など、究極の自由化を求めるものであり、各国の社会・文化的特性や国民の安全・安心、地域や環境が脅かされる恐れがあります。これは、平和に生き、暮らしていくための「生存権」が奪われることにつながるものです。食とみどり、水を守る全国集会は集会の名のもとに、改めてTPPの妥結・参加に強く反対して運動を進めていくことを決議します。
2013年11月29日 第45回食とみどり、水を守る全国集会参加者一同
(出典:平和フォーラムホームページ)
分科会・フィールドワーク
「第45回食とみどり、水を守る全国集会」(主催・同実行委員会)は、30日、「原発事故被害の現状と環境エネルギー政策」、「食のグローバル化と地産地消」、「問題だらけのTPPと食料・農林業・農村政策」、「水・森林を中心とした環境資源の保全・活用」の4テーマの分科会と 「仙台沿岸部東地区視察(災害対策、防災林、除塩水田)」、「石巻地区視察(被害の状況、仮設住宅、産業復興、復興市場)」の2つのフィールドワーク分科会 が行われた。各分科会では、活発な討論が行われた。フィールドワークでは、被災地の復興の現状を、参加者は自らの目で見た。